20240404

今日も研修。さすがに疲れがでていて、常にうとうとしていた。

ところで僕は昔から腰が弱く、昨日から運動が必要だと感じた。運動によって体をほぐさなければ腰や肩が凝って気持ちが悪くなるのだ。とはいえ、勤務で疲れているのに家に帰って着替えて外を走って、なんてことをする元気はないように思った。だから背に腹はかえられなかった。chocoZAPの門を叩いたのである。

ジムというと、昔からいいイメージはない。資本による管理化の象徴のように思っていた。本来なら外を走ればいいはずなのに、人はすすんで自らを狭い部屋に閉じ込める。自分の身体のことすら巨大資本にゆだねる。それは恐ろしく罪深いことのように思っていた。

京都にいる間は鴨川を走るだけの余裕があった。というか走る必要もあまり感じなかった。パフォーマンスが低下しても大して困らなかったのだ。ところが今、それでは困る。この現代の高度資本主義社会において資本の走狗になるということは、やがては自発的に自らを資本の管理下に捧げることを強いられるようにできているのだと思った。

 

閑話休題、今日も実はこれまで読んだことのなかった漫画を読んだ。

富沢ひとし『ブリッツ・ロワイアル』。

バトル・ロワイアルシリーズの富沢ひとし版だ。なんでそんなものを富沢ひとしが描いてるんだよ、というツッコミは置いておいて、良い評判をかねてから聞いていたので富沢ひとしが好きな僕としては読まねばとずっと思ってきた*1

バトル・ロワイアル』といえば、教師が生徒に「殺し合いをしてもらいます」と宣言するシーンだが、富沢版では違う。死の任務を生徒に与え、死への恐怖心と報酬への渇望を利用して生徒を分断し、言われてもいないのに殺しあうように仕向けるのだ。生徒側に入り込んだ工作員・中屋の悪事はやがて明らかになることだろう。だが重要なのは中屋への復讐を誓った主人公・真恋人(まこと)の取った行動だ。

 

怒りに燃える真恋人は危険な麻薬を呑む。軍の兵士が所持していたのを仲間が拾ったのである。

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とにかく呑む。戦友の制止も聞かずに呑みまくるのである。

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そうして自ら、軍の筋書き通りにすべてを捨てた人殺しマシーンになっていくのである。そんなこと望んでいなかったはずなのに……。

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僕もジムに行くことなんて望んでいなかった。だが、驚くほど抵抗なくchocoZAPに登録してしまった。初期料金の一万も躊躇なく払った。

 

資本は自己増殖する。

人は働く。

仕事を終え、明日の労働力を再生産する手段すらも資本によって効率化されていく。

労働は選択肢を奪う。

覚悟を伴わないプライドだけの小さな抵抗なんてしている余裕はすぐに消えてしまう。

 

所詮僕は結局のところ悪と戦う気力のない人間だ。どこまでも自分が大事なんだ。もちろん、別にジム通いを始めたからといって、そうと決まったわけではない。ジムに通いながら立派なことをしている人だって世の中にはたくさんいるはずだ。ただ、ジム通いを始めたことが、そんな僕の偽善を象徴しているような気がした。ジム通いを始めたことに罪悪感を覚えたことが、僕の欺瞞を象徴しているような気がした。辛い。明日もまた仕事か。仕事が辛いんじゃない。この自分が辛い。

僕には「ブリッツ」の真恋人のように悪と戦う気概すらない。だが、それなのに薬を呑んでいる。昨日は睡眠薬を増やした。これからもっと薬は増えていくのかもしれない。ああ、資本(それ、そもそも本当に資本なのか?)に吞み込まれていく……。

*1:批評同人誌(?)『サブカルチャーと生存』のバトル・ロワイアル回では富沢ひとしに任せたのは間違いだったと総括されてたっけ

20240403

鬼頭莫宏ヴァンデミエールの翼』感想

今日は『ヴァンデミエールの翼』を読んだ。僕は鬼頭莫宏は大好きなのだが、実は読んでいなかった。時間は全然ないはずなのに、京都にいた頃より不思議と漫画を読む手がすすむ。

京都にいた頃は、いつでも漫画を読めた。いつも昼まで寝ていた。ベッドの上でスマホをいじるか、漫画の話をするか、ボードゲームをするか。それだけで時間が過ぎていった。

今は違う。当たり前の日常だったはずのものが日にわずかな時間しか許されない特別なものになった。揺れる満員電車の中で転びそうになりながら必死にかじりついた。その時間は救いだった。会社が特別に悪いところだとは思わないけど、それでも僕にはやっぱりこれしかないと思った。こんな気持ち、いつまで続くのかな。いずれ僕も、鬼頭莫宏麻枝准のことなんか忘れて疲れた顔で日々をやり過ごすだけの存在になるのかもしれない。

さて、『ヴァンデミエールの翼』だ。鬼頭莫宏のデビュー作。正直1巻はまだ持ち味が出てないように思った。賢い大人ぶって難しい言葉をあえて使う少年のような不自然な喋り方は変わらないが。鬼頭莫宏の自分を誤魔化し誤魔化し生きる人の偽善を挑発するやり口にもまだかたさがある。

ところが2巻になると変わる。意味があるのかないのかわからない死。キャラクターを救いたいのかそれとはまったく逆に罰を与えたいのかわからない展開。内容の過酷さと反比例してどんどん自由になっていく描き口。これだよこれ。これこそが僕の好きな鬼頭莫宏だ。

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空を飛び死へと向かう美少女の表象。それは95年以降の美少女文化ではしつこいほど繰り返されてきたように思う(もっと以前に彼らが参照した元ネタは多くあるのだろうが)。

僕も美少女になり、空を飛びたい。そう何度思ったことだろうか。

仮に、死の代わりに美少女の姿で空を飛べるとしたら、どうだろう。

死をもってナルシシズムが完全に満たされるその瞬間。

いや、僕は拒否するだろう。そんな度胸なんて初めからないのだから。本当はこの世界に心の底から不満を持っているわけじゃない。そんな自分が、少し嫌になった。

20240331

今日はシェアハウスで限界まで徹夜で過ごした後、東京に向かった。勤務は明日から。

失ったもののことを考えないようにして一日を乗り切った。幸いにして引越しの忙しさが助けてくれた。ただ、道中の新幹線では何もすることがなくて辛かった。

僕のちっぽけな世界は、終わりを迎えた。