大学六年間で思い出を作ることしかやってこなかった。
ちいさな穴にすっぽりとハマりこむこともなく、一生大事にできるものになったと思う。ちいさな穴にすっぽりとハマりこむというのは村上かつらの漫画『サユリ1号』からの引用で、恋人に裏切られた瞬間に、自分が恋人に気づかぬうちに依存してしまっていたことに気づいたときのモノローグだ。
僕がもし二回生くらいで大事な恋人ができていたら、こうなってたんじゃないかってときどき思う。ずっとべったり同棲して、サークル活動もあんまり力を入れなくて彼女がいないと生きていけなくなって……。
僕は恋人と同棲しながらスキルを身に着けるなり人間関係を広げるなりできる人間じゃない。恋人ができないことでずいぶん苦しんできたけど、これでよかったんだと思う。