ポジショニングと役割
僕は人間関係を築く上ではポジショニングと役割を重視している。
ポジショニングというのはその人の人間関係の全体像を見て、自分がどの位置にいれば必要とされるか考えて距離感や関わり方を選択するということ。役割というのはその人が自分にどんな役割を期待しているのかを考えてその人への態度を選択するということ。
以上は、大学入って以降、人に必要とされたくていろいろ試した結果身についた処世術なのだが、結局、人からの求めに応えるのが上手くなっただけで、結局いつもいつも受け身な関係に終始している気がする。僕は性格的にも能力的にも平凡で目立って優れているところも別にないので、自分に優しくしてくれるからとか利用価値があるからというだけじゃない、人間としての魅力で人を惹きつけられる人を見ると羨ましい。
二宮ひかるのすごさ
おとといくらいに『ハネムーンサラダ』を読み返して感動していた。奇跡のような作品だ。だが、前作『ナイーヴ』でもすでにその片鱗は十分に発揮されている。
『ナイーヴ』では、初めは体だけの関係だった田崎と藤沢の二人が徐々に距離を縮め強固な関係を築いていくさまが繊細に描かれている。
二宮ひかるは、人がどんなときに愛を深めていくかツボをわかっている。
相手の今まで知らなかった一面がわかったとき、あるいは、相手と通じ合えたと思えたとき、そして、相手が何を考えているのか、あるいは、何者なのかがわからなくなったとき。
その往復を繰り返すことで愛は深まっていく。
だから二宮ひかるの描く恋愛にはつねに、不安が付きまとう。
だが、そのうちに、けして消えない不安を抱えながらそれを少しずつ信じることができるようになる。不安定な関係であると認めつつもそこに安心できるようになる。
強固な関係というのはその不断のプロセスの中にあることを二宮ひかるは描き出している。
これは『ナイーヴ』最終話の一場面だ。身を寄せ合いながら二人はお互いの関係について将来の不安を語り合う。藤沢の満面の笑みに田崎は藤沢の不安を自分ごとのように感じて"安心"する。
キャラクターの印象的な表情に呼応して主人公の気持ちがモノローグとして綴られるのが二宮ひかるの漫画の大きな特徴だが、それが効果を発揮するのも、表情の描写のあまりの巧みさと率直で簡にして要を得たモノローグの力があるからだ。
ラストは以下の文で締められている。
オレも
彼女も
驚くほど弱い
臆病者だ
でもそれは
真剣だからだ
と思いたい