20231004

失恋

 

以前、失恋に苦しんでいた友人に、「もしあいつと付き合い続けても幸せになれなかったよ」と声をかけたことがあった。それが急に思い出されたのだが、別に相手を傷つけたわけではないのだけど、適切な言葉ではなかったなあとふと思った。

なぜ失恋が辛いのかという理由のひとつには、「かたく信じていた将来への可能性」が壊されたことに人はなかなか耐えられないということがある。「付き合い続けても幸せになれなかったこと」が明らかになることそれ自体が破滅的に辛いのだ。相手との未来を信じられなくなることが辛いのだ。だから、あの僕の言葉は何の励ましにもならない言葉だったなあ、と思ったのだった。

恋愛というのは常に未来が壊される恐怖がそばにあって、大変な側面もある。それでも人は人を好きになる。人を好きになることは、それが報われない片想いであっても嬉しいこともあったりする。好きな人のことを考えているだけで幸せになったり、好きな人にちょっとでも必要とされると嬉しかったり。だからついつい、人は好きな人との将来への空想を膨らませて、それがひとりでにどんどん膨らんで、弾けたときに、ひとりで傷ついていく。