20231228

金月龍之介は『ぷりぞな6』で名もない"島"に理由もわからないまま存在している少女たちを描いている。少女たちは実はみな現実世界で死に魅入られ、その瞬間に記憶を失くした状態で"島"にワープさせられていたのだ。そして"島"で人との交流を学び、「卒業」とともに現実世界に帰っていく。それが"島"のシステムだった。僕はここに、「ジサツ101」「フタコイオルタG」では自分の世界が自由に作り変えられることを説き、「まなびストレート」ではモラトリアムを丹念に描いてきた金月ワールドの総決算をみたい。

 

もちろん、現実に"島"は存在しない。

でも僕たちは、「もう耐えられない」「死ぬしかない」と心の底から思ったその瞬間、時を止めて、"島"のような場に行くことを想像できる。もし、"島"のような場所に行けたら、何か今見えているものとは違うものが見えてくるかもしれない、と思うことができる。

それだけじゃない。きっと現実世界に自分の"島"を作り直すことだって可能なのだ。

「『自分が世界の中心にいるって思えない男が、どうして他の人間の世界の中心になれる? 誰かに愛してもらうことができる?』 ――魔法の言葉がみんなを魔法使いに変えたのよ」(「フタコイオルタG」)

僕たちはいつでも魔法使いになることができる。魔法使いになって世界のかたちを変えることができる。絶望した瞬間にだって"島"に行くことができる。"島"を自分で作ることもできるかもしれない。"島"から帰った自分はこれまでの自分とはもう違っている。悲痛な現実を生き直すことができるようになっている。そうして生き抜くことができるとしたら、この世界は悲惨じゃないかもしれない。もちろん、どうしようもないことはあるかもしれないけれど、思ったよりなんとかなるのかもしれない。