20240727

comic-days.com

 

デートDVが題材のよくできた漫画ということで話題になっていたので読んでみた。

 

もちろん僕はポリコレガーとか叫ぶつもりはなくて、漫画でこうしたものを啓発する取り組みには大いに賛成であるのだが、だからといってそれで満足というわけではない。

 

DV男側の描写はうまかった。クラスでのポジション、押しの弱そうな人を狙う卑怯さ、モラハラの仕方、リアルを感じた。だが女性側の描写はどうだろう。

 

DVについての保険の授業を聞いてなかった。それで「あ こいつ カスなんや」。

 

そこまではギリギリわかる。わざとらしすぎて引いてしまうが、まあギリギリ。

 

女性の次の行動がいただけない。

 

白昼堂々教室で、男を殴る。

「お前レイプ犯なんだからちゃんと聞かなあかんやろ」

 

これはファンタジーだし、ファンタジーにしても稚拙だ。それまでのリアル調の話の流れからしても違和感がある。

 

白昼堂々教室で男を殴り、「お前レイプ犯なんだからちゃんと聞かなあかんやろ」とは、ならんだろ、普通。

 

なんやかんや別れる別れないで揉めて、友達とか親とかが入ってきてようやく終わるんだよ。そう簡単に行かないからデートDVの問題は難しいんじゃなかったのかよ。

 

人間みんなそんなことできるほど強くないよ。いじめられている子供に対して、「殴り返せ」ってアドバイスしてくる無責任なおじさんと同じ、いや、それよりも罪が重いものをみた。

 

ようはそれって自己責任論だよね。どうして彼女がそんな男に引っかかってしまったのか、心の内側の深いところを見ようとしていない。そんな風ではDVに苦しんでいる人を漫画で救うことなんてできるはずがない。

 

あの男を殴るこぶしが、その目が、言葉が、この世界から切り離されて宙に浮いている。気持ち悪かった。文字通り「はしごを外された」って言ってもいいのかもしれない。作者のキャラクターと向き合う責任の一切を最後の最後に都合よく免除した4ページだった。

 

最近はこのような不誠実な漫画ばかりが溢れかえっていて本当に嫌になる*1

*1:新しい人で挙げるなら冬野梅子くらいだろう。昨今の誠実な漫画について知っている方は情報をください。