手袋の片方が見つからない

手袋の片方がどうしても見つからない。探す。部屋のどこを探してもない。机の上には食べ終わったヨーグルトのカップがいくつか、置きっ放しになっていた。本と漫画で埋めつくされた床。ベッドの下にもない。だんだん気分が重くなってきた。なんだか吐きそうだ。

 


手袋がないままだったら外出できない。外出ができなかったら授業にもサークルにも出られない。なんで見つからないんだ。これはなんの罰なんだ。僕の人生はただでさえ出遅れている。こんなところで時間を無駄にするわけにはいけない。

 


焦りの内実は次第に変わっていった。どうして昨日は何時間もゲームをしてたんだろう。そういえば今週はやりたいことが何もできてない。そもそも大学に入ってから、僕は何一つ打ち込めるものがなかった。いつも、すぐにでも忘れてしまうようなネット上の文字とばかり戯れている。何一つ自分の中に積み上げることができない。もしかしたら、もう取り返しがつかないところに来ているんじゃないだろうか。

 


手袋を必死で探す。服のポケット。カバンの中。洗濯カゴ。床。床。床。床。もう嫌だった。自分にとって本当に価値のあるものがどうしても見つからない。いつまで僕は探さなきゃいけないんだろう。こんなのは生き地獄だ。逃げなきゃいけない場所なんだ。それなのに、何を諦めればいいのかわからない。僕は探し続けた。

 


結局、手袋はベッドの下の奥、目立たないところで見つかった。多分上から落ちたんだろう。僕の人生みたいだった。僕が見つけなかったら、このままずっとベッドの下でうずくまっていたに違いない。底の見えない絶望感。これからも安らぎを得られないまま生きていくんだろうか。安心できる寝床が欲しい。焦りも不安もない場所。小さい頃は確かにあったはずなんだ。なのに、そんな未来が全然想像できない。自分の力ではどうにも見つけられそうにないのだ。誰か僕を見つけてくれ。ベッドの上に連れ戻してくれ。誰か・・・