20230728

テスト!

 

昨日は徹夜でレポートを書き上げ一時間仮眠したあと試験に向かった。

この授業の成績評価の配点は一定割合で出席点が含まれている。

僕は一度も出席しておらず、残りの配点から持ち込むことのできる紙資料を頼りに合格点以上の点を叩き出さなければならない。
幸い持ち込み可だったので授業資料を印刷し、関連してそうな本を5冊借りていた。

 

①その専門領域全体を包括する入門書。弱そう。
②同上。こっちはまだ使えるか……?
③なんか外国人が書いたよくわからない本。授業の範囲と重なるから借りてきたが、頼りにならなさそう。
④⑤授業で習った範囲ドンピシャの二巻本の概説書。これは心強い!

 

レポートで全ての力を使い果たし、勉強時間ゼロのまま僕は試験に挑んだのだった。

 

教室に入ると異様に茶髪や着飾った人間が多いことに気づく。専門の授業だとばかり思っていたがどうやら一般教養の授業でもあるようだった。

 

ところで、僕はいわゆる垢抜けたチャラチャラした連中を見ると、こいつは何も考えてない馬鹿なんだろうな、と見下してしまう。これはもう自動的にそうなってしまうのだが、これまで生きてきた24年で培ってきた自尊心防衛術である。自分の性的魅力や外見に対するコンプレックスは小学校の頃からずっと強かった。その積み重ねた歳月の結果だ。
あいつらは見てくれのことばかり考えて本当に大事なことを考えていない。僕は外見を気にしない人の方が好きだし、僕と心を同じくする人がいつか僕を見つけてくれるに違いない。そうずっと思ってきた。

 

だが、今の僕は、実際のところチャラチャラしているように見えて学問に対して本当に真摯に取り組んでいる人をたくさん知っている。彼らは、外見を整えることがもたらす好影響をちゃんと理解しているし、それだけ周りが見えている余裕がある分、自分の仕事にしっかり取り組むことができているのだ。

そして今の僕も美容院で髪を縮毛矯正し、その髪に毎晩風呂でオージュアの高いシャンプーを塗りたくり、洗顔料と化粧水乳液を欠かさず顔につけ、ちょっと高いブランド物の服を身に着けて授業に出ている。僕も馬鹿の一人であった。

 

だが、それでも自分が20年間培ってきた観念にはどうしても勝てない。あいつらは何も考えてない馬鹿に違いないと脳が勝手に囁いてくる。だが、現実の僕は勉学をサボり続けて在学六年目。茶髪の彼らが高校生のときに済ませてきたような誰かとお付き合いをするなんていう経験もない。本当に人間として駄目なのは僕の方だ。

 

さて、実際の試験は単語記述式の大問1、論述式の大問2、自由記述式の大問3であった。単語記述式の大問1は、今初めて見るレジュメのコピーとにらめっこして、推論から答えを導いていく。単語しか書いてないレジュメから単語間の関係を予測して適切と思われる答えを絞り出すのだ。論述式の大問2では持ち込んだ本④⑤が多少は役に立ったが自信はない。大問3は時間がなく、白紙で提出せざるを得なかった。これは間違いなく通らない。授業に出ていないどころか試験勉強を一切していないのだから当然であった。

なんのために90分もの時間を使ったんだろう。

こんなことをするために大学に入ったのではなかったはずだ。卑怯な自分が恥ずかしく、惨めに思えた。

この試験会場で一番の馬鹿は僕であった。