アニメ『School Days』感想(ネタバレ有)

  School Daysは良きにつけ悪しきにつけ、知名度が非常に高い作品だ。主人公が殺される衝撃の最終回は放送後10年以上経った今も話題にされ続けている。僕も例のシーンだけは有名なので見たことがあったのだが、話題性だけのアニメという印象が強く、今の今まで見ないでいた。

 


  ところが、実際見てみると、これが予想以上に面白い。

  常に視聴者をドキドキさせる仕掛けがあり、飽きさせないのだ。

  序盤は誠が世界の助けで言葉と付き合う話だが、徐々に世界と誠は接近していく。二人の接近に、言葉と付き合っているのにいいのか?本当にいいのか?と夢中になってしまった時点でもう負けだ。その後は、もう画面から離れられない。時には、主人公の節操のなさにイライラし、時には、放蕩主人公に振り回されるヒロインたちに同情する。見てる間ずっと感情を引き出してきて、その構成技術にはすっかり驚かされてしまった。

 


  この面白さのポイントは、主人公の思いとヒロインの思いの重なりと食い違いのバランスだ。言葉についても世界についても言えることだが、付き合い始めくらいまでは、相互に愛し合っているのに、次第に両者の愛に溝が生まれてしまうのだ。

  言葉も世界も主人公との逢瀬を重ねるごとに誠への愛情が強くなっていく。だがその一方で誠の方は、接触する機会を重ねるごとに相手の不快な面ばかりが目についてしまい、嫌になってしまうのだ。

  重なり合っていた思いがすれ違ってしまう、その無常さに感情を動かされるのである。

 


  さて、この作品を語る上での僕のキーワードは、"完璧主義"だ。

  誠の失敗は、彼の完璧主義にある。彼が女を取っ替え引っ替えするのは、100%の快楽でないと満足できないのである。彼は、自分のことを全て受け入れてくれる理想の女性を求めていた。言葉や世界に対しても多分に自分の理想を押し付けていた部分があるようだ。だから、彼の求めを彼女らが拒めばそれだけで不満になり、結果として彼の中で悪い印象が肥大化していき、破局に至るのである。

 

  誠は、「彼女に自分の理想を押し付ける」→「理想と現実の食い違いに不満を持つ」→「理想を求めて別の女に手を出す」→(最初に戻る)というサイクルを繰り返しているのだ。

 


  こう捉えてみると、誠の抱えている問題が身近なものに見えてこないだろうか。僕らはいつも理想と現実の狭間で苦しんでいる。毎日辛くて苦しくて、それで死んでしまう人だっているのだ。

  考えてみれば、言葉や世界だって同じじゃないだろうか。"自分のことを変わらず愛してくれる誠"という理想に過剰に依存していた彼女らは、それが現実と決定的に乖離したとわかった瞬間に、壊れてしまった。誠との違いは、彼女らにはもう理想の誠にすがる以外の選択肢が無かったことだろう。世界が追い詰められて選択肢を失っていった過程は、よく描けていたと思う。依存していた刹那と誠が次々と自分の元を離れていった結果、彼女は誠を殺すに至るのである。そして言葉も…

 


  School Daysは、僕たちの苦しみの根源にあるものに迫っている。この苦しみの解決策はおそらくないのだろう。受け入れて生きるしか方法はきっとないのだ。それに気づかされた作品だった。